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3.11を心に刻んで

北川フラム〈3.11を心に刻んで〉

「はやく行きたいなら、ひとりで行け、遠くまで行きたいなら、一緒に行け」
(小田マサノリ・真島一郎(対談)「ファー・フロム・ザ・フィールド・オブ・アフリカ」
『思想』2017年8月号)

*  *


 アフリカに深く関わってきた小田マサノリさんと真島一郎さんの対談に出てきた言葉です。
 小田さんはつづけて言う。「モフツィシバが講演のなかでさりげなく口にしたこのアフリカの思想は、あまりに急速に進みすぎたグローバリゼーションの結果、排外主義や人種差別の災禍に見舞われている世界に向けて差し出してくれたのかもしれませんね。1パーセントの富裕層たちだけがどんどん先に進んでゆき、99パーセントの民衆と貧困層を置き去りにしていった、共同と包摂を忘れた世界にね。だからといって、富をひとりじめにした妖術師を退治するのではなく、わるい霊たちを包摂するようなやり方もあるということも忘れてはいけませんね。」
 私にとってアフリカは、もっとも遠い地域のひとつです。しかし一枚の飢えた子の写真さえ見れば、その本人と親たちの気持ちが少しは分かる気がします。そのアフリカで、「遠くまで行きたいなら、一緒に行け」と考える人たちが生まれてきていることに希望があると思うのです。
 石巻の大川小学校跡に案内されて、私たち美術に関わる者にもできることがあるのでは、と思いました。亡くなったその一人ひとりが生きてきた途を遺族から伺い、その一人ひとりの人たちを、関わりのあった人たちとともに荘厳(しょうごん)させていただけるのではと思いました。
 この情報過多の世界では、何に私たちは反応し感応するかが大切です。3月11日は私たち日本に住む人にとって共通の体験となり、それぞれにとって重い意味を持ちました。私にとってアフリカは同じように重い世界です。それは一人ひとりの生に思いを寄せるところからでてくる思想です。できうる限り三陸の人たちと一緒に行きたいと思うのです。

(きたがわ ふらむ・アートディレクター)

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