web岩波 たねをまく

岩波書店のWEBマガジン「たねをまく」

MENU

3.11を心に刻んで

広井良典〈3.11を心に刻んで〉

「自然エネルギーは、自然の力をお借りしてエネルギーを作り出すという考え方であり、地域で自然エネルギーに取り組むということは、地域の自治やコミュニティの力を取り戻すことであると、私どもは考えております」
(NPO法人地域再生機構副理事長・平野彰秀さんの言葉)

*  *


 これは、岐阜県郡上市の山間部にある石徹白(いとしろ)地区で、小水力発電を軸とした地域再生に取り組んでこられた平野彰秀さんの言葉である。平野さんのこうした活動は近年全国的にも注目されており、最近では再生可能エネルギーをめぐる各地の取り組みを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督)でもその中心的な事例として描かれている。
 平野さんは当初東京の外資系コンサルティング会社に勤務していたが、“グローバル” な問題とされているものも、その実質はたとえば食糧や資源、エネルギーをめぐる争いであり、したがって “ローカル” な地域がそれらをできるだけ地域内で自給できるようになってこそ解決できるという考えを抱くようになり、地元の岐阜にUターンして上記のような活動を始めることになったという。
 一方、私は様々な経緯から “鎮守の森” というものに関心をもつようになっており――最初に知った時驚いたのだが全国の神社・お寺の数はそれぞれ8万数千で、コンビニの数(約6万)よりも多い――、2004年頃からそれと福祉や環境、地域再生をつなぐ活動を少しずつ進めていたが、「3. 11」を契機として、鎮守の森と自然エネルギーを結びつけた「鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想」というプロジェクトを考えるようになっていた。そうした時期にたまたま平野さんの取り組みを知り、2011年の暮れ頃にfacebookを通じて見ず知らずの平野さんに連絡を試みたのだが、その時にいただいたメッセージが冒頭の言葉だったのである。
 鎮守の森と自然エネルギーの分散的整備を結びつけるなどという考えには怪訝な顔をされるのではと覚悟していたが、意外にも平野さんの返信には、「小水力発電に取り組んでいる石徹白という地区は、白山信仰の拠点となる集落であり、小水力発電を見に来ていただく方には、必ず神社にお参りいただいています」というメッセージまでが含まれていた。つまり、「鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ」はある意味で既に存在していたのである。
 平野さんの取り組みに勇気づけられて、それとは比べるべくもないが、私自身はその後「鎮守の森コミュニティ研究所」を作り、ささやかながら関連の活動を進めている。

(ひろい よしのり・哲学者)

*「鎮守の森コミュニティ研究所」のホームページもぜひご覧下さい。   http://c-chinju.org

 

バックナンバー

閉じる