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3.11を心に刻んで

松元ヒロ〈3.11を心に刻んで〉

やらないことがメッセージになっている。そのことに拍手
(永六輔、2011年3月22日消印の葉書より

*  *


 東日本大震災の翌日、新宿紀伊國屋ホールで決行した、私のソロライブ「ひとり立ち」。観に来てくださった永さんから葉書が届きました。
 震災当日のライブはさすがに中止しました。余震が続く中、ホールの入口に立って「今日は中止です」と、8人位のお客さまに頭を下げました。「でしょうね。頑張ってください」と皆、帰って行かれました。電車も動いていないので楽屋に泊まり込んだ私。テレビからは恐ろしい津波の映像が。
 翌日、私はホールの支配人に頼みました。「折角来たお客さまを帰したくない。客席にいる2時間弱の間だけでも、悲惨な現実を忘れ、笑って元気になって欲しい」と。支配人も「このビルは本の重みに耐えられる設計になっています。やりましょう」。そこに永さんから「今日、やるの?」と電話が。ラジオから「今日、ヒロくんはライブを決行するそうです。僕も行きます」。
 幕が上がると、200人を超えるお客さまが拍手で迎えてくださいました。政治を風刺し、皆で笑い、アンコールの拍手。恒例の「マイムニュース」を待っています。これは、当日のラジオニュースを流し、その声に合わせて即興のパントマイムを演じるという私の十八番(おはこ)です。しかし、笑えるニュースがありません。すべて「これで死亡者が●人、行方不明者が……」。私はスポットライトの中に立ち「すみません、今日はニュースが流せません。でも、こんな時に良く来てくださいました」と、思わず涙ぐんでいました。お客さまも泣いていました。この事を永さんが書いてくださったのです。
 人の死だけは笑いに出来ません。生きているから笑えるのです。だから私は憲法を変えて戦争出来る国にしようとする人々に反対の声を上げるのです。第一、戦争になれば「笑うな! 真面目にやれ!」という空気になるのです。芸人が真面目にやったら面白くないのです。芸人は仕事を失うのです。
 私は言います。「今の憲法を守るためだったら戦争も辞さない!」(ギャグで~す)。

(まつもと ひろ・芸人)

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