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3.11を心に刻んで

盛口 満〈3.11を心に刻んで〉

おじい、なぜ明るいの?
(坂本菜の花『菜の花の沖縄日記』ヘウレーカ)
*  *
「菜の花」というのは本名だ。「何度踏まれてもたちあがるところからつけられた」と、自著の中で名前の由来を紹介している。
 菜の花は石川から沖縄・那覇にある、珊瑚舎スコーレという小さなフリースクールの高等部にやってきた。そんな彼女は沖縄に来るにあたって、地元、石川の新聞社に、沖縄での見聞を毎月エッセイとして投稿してほしいと依頼されたのだという。その題名が『菜の花の沖縄日記』。彼女は3年間、スコーレに在籍し、石川に戻る。その3年間のエッセイの1回目のタイトルが、冒頭に紹介した一文だ。菜の花は、スコーレに入学する以前、ヘリパット建設で揺れる、やんばる、高江を訪れている。基地反対という肉体的にも精神的にもキツイ日々を送っているはずの、地元のおじいが、なぜ明るい笑顔で自分を迎え入れてくれるのか。そんな疑問が、そのままタイトルとなっている。そしてその疑問への自分なりの答えは、3年後、スコーレを卒業する折のエッセイに記されている。
 なぜ、明るいか。「それは明るくないとやっていけないくらい暗いものを知っているから、だと思います」と。
 菜の花は他県からやってきた高校生として、そしてそれに加えて、比べようもなくまっすぐなまなざしで、沖縄の今をエッセイにつづった。その姿を追った沖縄のテレビ局の番組も、編集を受け『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』という題名の映画となった。
 映画の試写会に参加した。
 「いい」。
 見終わって、最初に頭に浮かんだ言葉は、ただそれだけだった。
 映画の中には、高江だけでなく、度重なる反対にもかかわらず一方的な基地建設が進む辺野古の様子も映し出される。度重なる米軍機の事故。沖縄県民として、こころが痛む映像が次々と映し出される。
 それでも、見終わった後、希望を感じた。それは、こんな現実の中でも、一人でもできることがあると、メッセージを受け取ることができたから。
 それは沖縄だけのことではない。ぜひ、みんなに見てほしい。
 
(もりぐち みつる・理科教育者)

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