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3.11を心に刻んで

千 葉 眞〈3.11を心に刻んで〉

地球は囁いた、でもあなたは聞く耳をもたなかった〔…〕
地球は叫んだ、でもあなたは耳を塞いだ
そして私は、あなたの目を覚ますために生まれた〔…〕 
地球がどれほど危機的な状況にさらされていてもあなたは聞こうとしなかった
終わらない戦争/止まらない貪欲/あなたはただ自分の生活を続けた〔…〕

*  *
木村護郎クリストフ氏は、上記の詩に触れながら、「人間は地球の主人なのか」ということが、「今回のコロナ禍が人間社会につきつけたさまざまな問いのなかで、最も根源的な問いだといって間違いないだろう」と指摘している(「人間は地球の主人なのか」『季刊 無教会』第62号、2020年8月20日、3頁)。今回のコロナウイルスの世界規模の拡大と災禍は、3.11東日本大震災・原発事故の出来事と不思議な糸で繫がっている。二つの出来事はとくに、産業革命以降の人類種による自然の植民地化(開発や収奪、破壊と汚染)と連動している面がある。コロナ禍の場合は、自然破壊による野生動物との接触の増大がその背景にある。そして3.11原発事故……。放射性物質のなかにはプルトニウムのように半減期が数万年に及ぶものもある。原爆や水爆などの核兵器はもちろん、原発もまた、宇宙船地球号の共同の乗組員である地球上の生きものたちとの共生を破壊してしまう多大な危険と背中合わせである。
 人類種は自然に対してケアと保護の責任ある役割を捨て、傲岸な支配者のごとく振る舞ってきた。人間は自然を自分たちの繁栄のために存在する豊かな物質的財の宝庫として乱獲してきた。人類種の文明的活動は、地球汚染と自然破壊を作り出し、オゾン層の破壊、大洋の汚染をもたらした。また現在、毎年のごとく、気候変動による大規模な山火事を招き、北極や南極などの氷河や凍土を氷解させ、台風、ハリケーン、トルネードなどを大規模化させ、甚大な自然災害を招いている。これら多くの災禍は、地球の人類種へのしっぺ返しのように思われてならない。
 アルベルト・アインシュタインはかつて、「原子核から放出された巨大な力は、私たちの思考様式以外のすべてのものを変えてしまった」と述べた。ヒロシマ、ナガサキ、チェルノブイリ、フクシマといった未曽有の悲惨な体験を風化させてはならない。そしてコロナ禍や異常気象に直面する今、自然との向き合い方に関する従来の思考様式を一変させ、価値観・ライフスタイル・制度の抜本的改革をしないと、修復不可能という臨界点を超えてしまうのではないかと案じる。
 
(ちば しん・政治思想史/政治理論)

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