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3.11を心に刻んで

河合弘之〈3.11を心に刻んで〉


 原発事故は国民生活を根底から覆す。
 産業も文化も芸術も教育も司法も福祉も
 つましい生活もぜいたくな暮らしも何もかもすべてだ。
 したがって、原発の危険性に目をつぶっての
 すべての営みは、砂上の楼閣と言えるし、
 無責任とも言える。
 そのことに国民は気が付いてしまった。
 問題は、そこでどういう行動をとるかだと思う。

(河合弘之・大下英治『脱原発』青志社)

*  *

 私は、東京電力福島第一原発事故の3カ月後の2011年6月26日に『脱原発』という本を作家の大下英治氏と共著で発行しました。
 その表紙の袖の部分に冒頭の文言を記載しました。
 私は「ふくいち事故」の十数年前から原発差止訴訟に取り組んでいました。しかし、やってもやっても原発訴訟は負け続けで、仲間を含めて20連敗でした。私も疲れ果て、そろそろ足を洗おうかと、弁護団会議や集会もサボり気味になっていました。そこであの「ふくいち事故」が勃発しました。福島第一原発の爆発をテレビで見ながら、「やはり我々の言ってきたことは間違いではなかった」と胸に刻み、残りの人生を日本から原発を全てなくすことに使おうと誓いました。上記のように「問題は、そこでどういう行動をとるか」です。
 私はすぐに全国の脱原発弁護士を糾合して「脱原発弁護団全国連絡会」を結成しました。所属弁護士は全国でほぼ全ての原発の差止訴訟に踏み切り、今日に至っています。訴訟は一進一退の状況です。以前のように負けっぱなしではありません。
 脱原発の戦いは総力戦です。訴訟、デモ、マスコミへの発信、政治家や地元首長への働きかけ、立法運動、選挙……。私は訴訟だけでは不十分と考え、映画製作(「日本と原発 私たちは原発で幸せですか?」他)をしました。「原発ゼロ・自然エネルギー基本法」の立法運動もしています。いつの間にか脱原発運動のフロントに立ってしまっているわけですが、原子力ムラは不死身の恐竜の如く手強い敵です。しかし先に光明が見えてきました。自然エネルギー急増の大潮流が日本に及んできたのです。自然エネルギーが大半を占めるようになれば、原子力発電のバカバカしさが国民、経済界に浸透し、原発廃止に向かっていくことは自然な流れです。
 夜明けは近いと思います。しかしその夜明けの前に、もう一度原発重大事故が起きてしまえば、全ては水泡に帰します。それを避けるために、私たちは原発再稼働阻止の戦いをより一層強化しなければならないと考えています。

 
(かわい ひろゆき・弁護士)

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