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3.11を心に刻んで

堀川理万子〈3.11を心に刻んで〉

さっきの「やくそく」を、おもいだした。
わたしが手に入れたのは、森かもしれない。
そうおもうと、心のなかでなにかが変わった。

(ニコラ・デイビス文、ローラ・カーリン絵『やくそく』さくまゆみこ訳、BL出版)

 

*  *


 この絵本では、約束のリレーがテーマです。女の子がどんぐりを受け取り、土に埋めて、森にしていく。その行為のバトンを次に渡す。そして、そんな行為の連鎖を思うとき、私が会った王様や、女王様たちとのことを思いおこします。
 「お肉がたくさん食べられる国」
 「お花がいっぱい咲き乱れる国」
 「戦いに勝った者の国」……。
 絵本作家仲間と福島県相馬市、南相馬市のふたつの小学校に行かせてもらった時のこと、1時間半ほど絵本の読み聞かせとワークショップをしまし た。子どもたちは「どこからきたの?」とか聞いてくれて、とってもフレンドリー。

 ワークショップは「王様、または女王様になって、自分の国の旗を描こう」。 長い金色の紙で、まず王冠を作り、それをかぶります。そして、旗。当時、震災からまだ3年しか経っていなくて、なかには、震災で肉親を亡くした子どももいて、先生たちは、そんな子どもがどんな旗を描くかと、密かに心配していたようでした。でも、実際その子(女王様)は、きれいなピンクの雲に、女の子が遊んでいる気持ちのよさそうな旗を完成さ せました。他には、旗の上をはだしでぺたぺた歩いて足型をつけて笑っている女王様、描いてはまた次のものを描き、をくりかえし、とうとう緑灰色の渋い抽象を生み出した王様、いろいろでした。できあがった旗についてインタビューして、そこで出た回答が先ほど挙げたいろいろの国です。お肉の国には、焚き火で炙られる大きな骨つき肉が。お花の国には、ゆりに似た花が。勝者の国には、黒バックに血のついたドクロが。
 ワークショップが終わると、ある王様 を小さな弟(だと思う)が迎えに来ました。その王様は、王冠を彼にかぶらせてあげて、一緒に帰っていきました。やさしい国の王様。なにか楽しい時間を持ってもらえたら、と思って行ったけれど、色々いいことを与えてもらったのは、わたしのほうだったのでした。ありがとう、女王様たち、王様たち。



(ほりかわ りまこ・画家、絵本作家)

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