巻頭エッセイ:藤井敏嗣【『科学』2022年7月号】
◇目次◇
特集 富士山噴火に備える
[イントロダクション]
富士山噴火に備える……藤井敏嗣
[噴火史]
富士火山の噴火史……山元孝広
宝永山は降り積もってできた火砕丘である……馬場 章
噴出物から読み解く富士山のマグマ供給系……安田 敦
[現状]
富士山のモニタリング――地下では何が起こっているか?……藤田英輔
[地下構造]
電磁気的観測で地下構造を探る――マグマ性ガスの上昇と電気比抵抗構造……相澤広記
富士山の地下構造を地震波から探る……中道治久
[地下構造を探る新手法]
桜島のリアルタイム透視……田中宏幸
世界初の多方向3次元透視が明らかにした大室山の内部構造……小山真人・宮本成悟・長原翔伍・鈴木雄介
[防災]
富士山ハザードマップの改定……吉本充宏
宝永噴火の降灰シミュレーション……萬年一剛
都市が火山灰で覆われたらどうなるか……久保智弘・石峯康浩
火山灰で覆われた道路を車両は走れるのか……西澤達治
富士山噴火の降灰が首都圏のインフラに及ぼす影響……伊藤哲朗
富士山噴火と防災情報……地引泰人
[巻頭エッセイ]
火山専門家の育成・確保が急務……藤井敏嗣
病理標本の保管に関する提案――自然史標本との比較を通して……伊藤真理子
[連載]
広辞苑を3倍楽しむ116 分岐……三浦 徹
これは「復興」ですか?64 「知らない間に」消されるふるさと……豊田直巳
数学者の思案2 フィールズ賞と国際数学者会議……河東泰之
3.11以後の科学リテラシー114……牧野淳一郎
[科学通信]
学生の取ったデータは誰のものか……小林信一
次号予告
◇巻頭エッセイ◇
これまでの各大学における少数の,したがって専門分野も限られる教員による教育から,幅広い専門分野の多数の教員による教育,実習が可能になり,また情報学などの社会科学の講義も行われるようになった。さらには行政機関におけるインターンシップも取り入れられ,広い知識と理解を必要とする火山専門家の効果的育成が可能となった。現在では,主に修士課程の学生を対象とした基礎コース,応用コースに加え,博士課程進学者を対象とした発展コースも整備され,コース修了者の関連分野への進出も進みつつある。このように人材育成という点では効率的に行われるようになったが,このことが火山専門家の不足解消に直結するわけではない。このプログラムの修了者が,専門家として処遇されるポストが確保される必要がある。