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森泉岳土 [表紙に寄せて]世界もラピュタも終焉は[『図書』2026年6月号より]

 『天空の城ラピュタ』が公開された1980年代、「行き過ぎた科学文明は世界を滅ぼす」というテーゼが当たり前のようにアニメやマンガなどで流通していた。流行っていた、といってもいいほどだ。文明は滅び、都市は廃墟と化し、人々はつつましく火をおこし、食糧や水は貴重なものとなっている。

 当時は高度成長期だったにもかかわらず、いや、だからこそ、このままでいいのかという「成長」への不安がわたしたちの足元を揺るがしていたのだろう。公害や開発がもたらす自然破壊や、飽和した物質社会、原子力など人の手にあまる科学の脅威……。人間は土から離れては生きられない。『ラピュタ』の主題のひとつは、そういった歯止めのない「成長」への警鐘だろう。当時小学生だった僕も「この世界はなにかおかしい」と深く困惑して生きていたので、そんな価値観を共有できる作品に触れ、救われた気持ちになった。

 世界が滅びたらきっとラピュタのようになるのだろう。それも悪くない。11歳の僕はそう空想した。現に、映画で描かれた木々に覆われたラピュタの姿も、今号の表紙に描かれた廃墟と化した宮殿も、うっとりとするほど甘美だ。人の形跡は残るが、建物は静寂のなかで沈黙している。滅びには、そんな危険な甘さがある。僕たち人間が死に絶えたら、世界は森に覆われていく。ラピュタの玉座のように。

 だが、実際の世界の終焉は、幼い空想ほど甘美ではないだろう。戦争や権力闘争がインフラを破壊し、病や飢餓が蔓延し、個人の尊厳は奪われ、弱い者から命を落としていく。それが現実だ。ラピュタもおなじ道をたどったに違いない。パズーたちが花を供えた庭園の墓を見れば分かる。そこにあったのはたった1枚の「碑」で、ひとりひとりの個人ではなく、集団として、名を奪われたただの数として葬られている。映画のなかでさりげなく、ラピュタの終焉はそのように残酷に描かれている。

(もりいずみ たけひと・マンガ家)


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