前田健太郎『女性のいない民主主義』〈著者からのメッセージ〉
二つある政党のうち、片方の政党が常に選挙で議席の8割から9割を獲得する国を想像してほしい。おそらく、この国は民主国家には見えないだろう。
それでは、男性と女性という二つの集団のうち、片方の集団が議席の8割から9割を獲得する国はどうだろうか。この国は、民主国家なのだろうか。
実は、この二つ目の国は日本である。これまで、多くの人は、日本が民主主義の国だと教えられてきた。だが、女性の政治家がほとんどいない国の政治体制が民主主義と呼ばれている理由を、どれだけの人が説明できるだろうか。大学の授業で使われている政治学の教科書をめくってみても、きちんとした説明を見つけ出すのは難しい。
『女性のいない民主主義』は、こんな状況を変えたいという思いから書かれた。男性支配という現実から目を背けるのではなく、向き合うこと。そうすることを通じて、より豊かな政治学の可能性が開けることを示したい。
(まえだ けんたろう/東京大学法学部准教授)