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『図書』2026年2月号 目次 【巻頭エッセイ】小澤俊夫「昔話を聞かせてやってください」

◇目次◇
昔話を聞かせてやってください……小澤俊夫
草の根からの昔ばなしの復権……伊藤明美
ヴァニタスと時間……香川檀
右派とは何か?……中村督
流謫の歌、39篇……松﨑一平
金子文子を撮る……浜野佐知
刀剣を語ることば……内藤直子
韓国江原道・安政寺の絵解き説法……小峯和明
規範に抗う生のうた……神野紗希
食卓を賑わす発光生物たち……大場裕一
邂逅—ケストラーを訪ねて(上)……武田時昌
日本の古典うつろう日本語の姿(一)……山本貴光
「本」という火を灯し続ける……大和田佳世
『リア王』とイングランド型絶対核家族の相続……鹿島茂
なぜ、死んではいけないの?……中村佑子
こぼればなし

二月の新刊案内

(表紙=「オープニングタイトル」©Hayao Miyazaki『宮﨑駿イメージボード全集1 風の谷のナウシカ』より)
[表紙に寄せて]光と影/八代目 尾上菊五郎
 
 
◇読む人・書く人・作る人◇
昔話を聞かせてやってください
小澤俊夫
 

 昔話は口伝えされてきたので、耳で聞いてわかりやすい共通する語り口があります。昔話の本や絵本をみると、昔話本来の語り口を無視したものが圧倒的に多い。物語のできごとを作り変えてしまったもの、表現を昔話とは縁遠い美しい創作文芸の表現に変えてしまったものもあります。私は昔話を本来の簡潔で明瞭な文体で次の世代に渡したいと思っています。

 昔話は、無名の庶民たちが何百年にもわたって細々と子どもや孫に話して聞かせてきた、ただそれだけのものです。いろいろな生き方が、みんな昔話のなかで語られています。現代の私たちが、たくさんの子どもや若者を育ててきた昔の人の温かい目線から受けとるべきものは、たくさんあります。

 子どもたちに昔話を読んで、あるいは語って聞かせてやってください。そのとき「この話にはこういう意味がある」などといわないでください。ただ楽しく聞けばいいのです。身近な大人が生の声で聞かせてくれるとき、その声は子どものなかに一生の宝物となって残るでしょう。それは、日本の伝統文化を伝えることでもあるのです。

(おざわ としお・口承文芸学)

 
◇こぼればなし◇

〇 敗戦から4カ月後の1945年12月、雑誌『世界』が創刊します。日本が戦争に吞み込まれていくのをなぜ阻止できなかったのか。二度と戦争を引き起こさないために出版社は何ができるのか。焦土に立ち、悔恨の念とともに船出した雑誌でした。その創刊号を、80年目のこの1月、新字新仮名へと改め刊行いたしました。『翻刻世界 創刊号──昭和21年1月号』です。

〇 『改造』や『中央公論』に深い関心を持ち、以前から綜合雑誌発行の考えを温めていた岩波茂雄。最晩年の岩波は、創刊の決意を次のように遺しました。「無条件降伏を機会として甦生日本の理想的建設に邁進すべきである」。「我等の前途には尚幾多の艱難の横わることを覚悟せねばならぬ。だが今日の窮乏と困苦とは、真の平和と正義に基づく高度の文化を以て人類に寄与せよと天の我等に課せる大任に対する試練に非ざるなきか」(「「世界」の創刊に際して」より)。

〇 初代編集長は『君たちはどう生きるか』の吉野源三郎。創刊号の編集後記で吉野は、「国民がこの不幸な状態を切抜けて颯爽たる姿を取戻すために必要な精神的苦闘の公けな機関としての綜合雑誌」と自己定義しています。『世界』1000号記念の2025年12月号、創刊80年記念の2026年1月号と合わせ、ぜひ創刊号もお手に取ってみてください。

〇 ポッドキャスト(音声コンテンツ配信サービス)の番組「ほんのタネ」を、昨秋より開始しました。小社刊行の書籍や雑誌の話題を担当編集者からお届けするものです。初回配信は『百武三郎日記 侍従長が見た昭和天皇と戦争』(全3巻)がテーマ。担当編集者ならではのトークが本との出会いをお手伝いできることを願って、取り組んでまいります。

〇 日本近現代史家の吉田裕さんが2025年度朝日賞を受賞されました。小社では岩波新書『アジア・太平洋戦争』や、『岩波講座 アジア・太平洋戦争』(全8巻)等の著書・編著があります。

〇 2005年11月に刊行が始まった同講座は、当時30を過ぎたばかりのある編集者を中心に、若手たちが、吉田裕さんと成田龍一さんにご相談したことから始動した企画でした。初めて大型企画を立ち上げるも、試行錯誤の日々。意見を聞いて回った相手の一人が、歌人の小高賢として岩波新書『老いの歌』の著作もあり、当時まだ講談社にいらした鷲尾賢也さんでした。

〇 「アジア・太平洋戦争に関する講座シリーズが成立するでしょうか」。鷲尾さんは悩んでいる青年の背中を押すだけでなく、「若いうちにこそ大きな企画をつくりなさい」とエールを送ってくださったといいます。戦後80年、泉下の鷲尾さんはこの国をどのように見つめておられることでしょう。


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