D.アーミテイジ『〈内戦〉の世界史』〈著者からのメッセージ〉
日本の読者へのメッセージ
アフガニスタンからイエメンまで、世界ではおよそ40の戦争が起きている。もっとも深刻なのはシリアの紛争であり、推定では、50万人以上が死亡し、約600万人が居場所を失っている。シリアを含むこれらの戦争のほとんどどれもが、単一国家の領域内で起きている。したがって、今日の世界の戦争は、ほぼ全てが国内での戦争、つまり、「内戦」なのである。
しかし、そもそも「内戦」とは何なのだろうか。この言葉の定義や適用の仕方は、歴史を通してどのように変化してきたのだろうか。『〈内戦〉の世界史』で、私はこれらの問いに答えようとした。拙著を通じて、内戦が発明された古代ローマから、その発明を打ち消そうとする今日の世界まで、二千年の歴史の旅へと皆様をいざないたい。
何が内戦なのか――そして、何が内戦ではないのか――という問いにわれわれが混乱するのは決して新しいことではない。むしろ、それは、内戦という、もっともおぞましく、もっとも破壊的で、しかし、もっとも人間臭い戦闘形態について、何世紀にもわたって繰り広げられた思索と論争の結果である――これを示すのが、本書の狙いである。
この旅が、陰鬱だが避けることのできないテーマの解明に役立つことを願ってやまない。
デイヴィッド・アーミテイジ(ハーヴァード大学教授)
訳:細川道久