DARWIN DAY 2019 第2夜「江戸の骨は語る」(篠田謙一+渡辺政隆)
「進化論」を唱えたイギリスの科学者チャールズ・ダーウィン(1809~82年)の誕生日を祝うイベントが、今年も東京・下北沢のリベラルアーツ・カフェ「ダーウィンルーム」で行われました。ダーウィンの誕生日を祝う「ダーウィン・デイ」は、世界各地で記念イベントとして開催されています。
この日本で唯一の「ダーウィン・デイ」は、今年で4回目。ホストはダーウィン研究第一人者の渡辺政隆さん。岩波書店から『ダーウィンの遺産――進化学者の系譜』『一粒の柿の種――サイエンスコミュニケーションの広がり』などの著作があるほか、ダーウィンの『種の起源』(光文社)をはじめ多くの翻訳書で知られています。2月9日から12日まで4夜にわたり、それぞれにゲストを迎えてのイベントがありました。
第2夜2月10日のゲストは国立科学博物館副館長で、分子人類学を専門とする篠田謙一さん。昨年2018年4月に『江戸の骨は語る――甦った宣教師シドッチのDNA』を、2015年には『DNAで語る 日本人起源論』を岩波書店から刊行されています。
イベント冒頭、渡辺さんが、今回の対談のきっかけを話されました。それはもちろん、篠田さんの『江戸の骨は語る』を読まれたからですが、それ以前に渡辺さん、かつては本書の「主人公」シドッチが発見された切支丹屋敷跡の近所にお住まいで、そのあたりによく、イヌの散歩で訪れていたのだそうです!
篠田さんは、シドッチがどういう時代のどういう人物だったのか、どういう状態で遺骨が発見されたのか、当事者としてどうやってDNA分析をし、その遺骨をシドッチと認定したのかを、スライドを使いながら丁寧に説明してくださいました。これが前半。
後半には、ダーウィンの祖国、イギリスにおける人類学にまつわる話題として、ピルトダウン人――1910年代にイギリス、サセックス地方のピルトダウンでドーソン(1864~1916)が発見したと称した「人類化石」――が贋化石と同定されるに至るまでの話を、人類進化史に位置づけながら語ってくださいました。ピルトダウン人は、現代人の頭骨とオランウータンの下顎骨とを組み合わせたものであると、1950年代に判明しています。
休憩をはさんで会場からの質問コーナー。引きも切らず、鋭い質問が出されましたが、『江戸の骨は語る』や『DNAが語る 日本人起源論』にその答えの多くは書かれています…。なお、宣教師シドッチ鑑定のエッセンスは、『図書』2017年2月号のエッセイ「宣教師のDNA」から知ることができます。
篠田さん(左)と渡辺さん(提供:ダーウィンルーム)
©陣内利博
渡辺政隆(わたなべ まさたか)