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『科学』1月号 【特集】プラスチック汚染

◆目次◆

【特集】 プラスチック汚染─―海に広がる脅威からの転換
プラスチックによる海洋汚染:脱プラスチックと持続可能な開発目標(SDGs)……高田秀重
脱使い捨てプラスチック――動き始めた世界,取り組み遅れる日本……井田徹治
海域を漂流するマイクロプラスチックの現状と今後……磯辺篤彦
プラスチックがもたらす魚類への汚染と影響……黒部智史
海洋プラスチックから海鳥への汚染物質の移行と影響……田中厚資・山下 麗・高田秀重
マイクロプラスチックによる淡水域汚染……田中周平
[コラム]
深海のプラスチック……藤倉克則
スペインの浜辺に打ち上げられたクジラ――やせ細った体から29kgのプラスチックが現れた……八田浩輔
市販製品に含まれるマイクロプラスチックについて……中田晴彦・北原健一
プラスチック摂取は海鳥に消化阻害をもたらすか?……綿貫 豊
サンゴと褐虫藻の共生関係を妨げるマイクロプラスチック……大久保奈弥

巻頭エッセイ 
北海道の成り立ちと北海道胆振東部地震……木村 学


[新連載]
葬られた津波対策をたどって〈1〉……島崎邦彦
「米」遊学〈1〉 ネパールの炒り米「チューラ」……大村次郷

[連載]
これは「復興」ですか?〈22〉 サルの群れる村……豊田直巳
3.11以後の科学リテラシー〈73〉 ……牧野淳一郎
ちびっこチンパンジーから広がる世界〈205〉 西表島の動物たち:亜熱帯の島の生態系……松沢哲郎
アルキメデスからの贈り物〈20〉 アルベロスと星形正多角形……奥村 博
手紙がひらく物理学史〈4〉 友田鎮三と寺田寅彦の西遊紀行……有賀暢迪
失われゆく原子力発電の正当性と将来性〈14〉 原子力発電技術が日本の安全保障の一翼を担っているという不愉快な戯言(6)
 ――原爆製造のトップ・シークレット情報……佐藤 暁
科学技術・イノベーション政策のために〈12〉 医薬研究者養成のリアル:専門職養成の葛藤……小林信一

[科学通信]
〈リレーエッセイ〉地球を俯瞰する自然地理学 埋没地形と遺跡立地……松原彰子
〈コラム〉東京電力原発事故の情報公開 現場作業員が明かす宣伝とは異なる実態……木野龍逸

次号予告
訂正
今月の表紙
2018年総索引
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表紙=盛田亜耶 「洗礼者ヨハネの右手」 2016年 44.5×35.5cm 切り絵,アクリル絵具 photo by Ken KATO, courtesy of gallery ART UNLIMITED 
目次=特集井田論文図2参照。© Mizuki Hikaru
表紙デザイン=佐藤篤司 本文イラスト=山下正人

 

◆巻頭エッセイ◆

北海道の成り立ちと北海道胆振東部地震
木村 学(きむら がく 東京海洋大学特任教授,東京大学名誉教授)
 
 北海道胆振東部地震(以下,今回の地震)の震源域を含む地域は,3枚のプレートがぶつかり合う場所です.そのため,地下構造は複雑な様相を呈しています.
 3枚のプレートと聞くと,北海道近辺は北米プレートと,太平洋プレート,ユーラシアプレートとがぶつかる場所ではなかったかと思われる方も多いかもしれません.実はこれはプレートテクトニクスが提唱された初期の見方であって,2011年にまとめられたレビュー論文では,全球は56枚のプレートで覆われているとされ,より多くのプレートを識別しています.もちろん,研究は進歩しますので,これはあくまで暫定的な数字です.
 今日,北海道の東側はオホーツクプレート上に,西側はアムールプレート上にあり,南側に太平洋プレートが位置するという見方が有力になっています.地球科学の近い分野の研究者にも,こうしたプレートテクトニクスの新しい描像が,十分に知られていないように感じられます.

 大局的に北海道の成り立ちを振り返ると,西部北海道は古生代には大陸端の海溝縁にあって,当時のプレート沈み込みに伴う付加体によって基盤岩ができました.白亜期前期から中期のおよそ1億年前頃にかけて,中央北海道は,沈み込みに伴う海洋地殻の付加で大きく太ったとみられます.また,付加体を貫いて火山が噴き出し,新しい地殻が増えました.2800万年前から1500万年前頃にかけて日本海が開き,大陸から切り離されます.千島方面から北海道東部をなす大地が順次衝突し,日高山脈が形成され,1000万年ほど前には,ほぼ今日の北海道の姿が形作られていたようです.その後のプレートの動きは今日と同様と考えられ,今回の地震における断層の動きとも矛盾しません.

 今回の地震の震源域は,サハリンから北海道中央を貫く,古くから大地衝突が続く場所に連なって位置しています.
 地震波の速度分布をみると,今回の震源域近傍を含む中央北海道の地下は,平均的な日本の地下の様子とは異なっていることがわかっています.地震波速度が小さく密度の低い地殻が,深さ約70kmの沈み込むプレート上面にまで厚く存在している様子がみられるのです.これは,太平洋プレートが沈み込むその上に,東部中央北海道地殻と西部中央北海道地殻の2枚の上盤プレートが衝突しながら互いに重なりあうという,プレート三重会合点をなしている可能性を示しています.

 私たちは直接,地下の震源断層をこの目で見ることはできません.自然の地震波や人工的な地震波によって,地下構造の変化を観測しますが,観測方法によって注意しなければならない点や限界があります.
 今回の地震では当初,震源の深さが約40〜35kmであり,通常の活断層の深さ限度約15kmより深く,既知の大きな活断層(石狩低地東縁断層帯)とは関係がないといわれました.しかし,先に述べたこの地域の地殻の特殊性をふまえれば,より新しい見方が求められるのではないかと思います(木村学・他著『揺れ動く大地プレートと北海道』北海道新聞社刊,参照).
 大地の成り立ちもふまえた,活断層の新たな見方が求められているのではないかと思います.
  

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