「沢木耕太郎セッションズ〈訊いて、聴く〉」とは?
沢木耕太郎「セッションズ〈訊いて、聴く〉」(全4冊)の刊行が3月10日から始まります。これは、各巻に沢木耕太郎さんが選んだ10のセッションズをおさめたシリーズです。3月10日には、第1巻と第2巻が刊行されます。早速、2月15日に毎日新聞でも紹介されました。
このセッションズとはインタビューでもなく、対談でもなく、というものです。
「セッションズ」とは、何なのでしょうか? 沢木耕太郎さんは、それぞれの本の最初におさめたエッセイ「耳を澄ます」に、このように書いています。
一本の外国映画を見た。その中で、心理療法のために向かい合った二人の会話を、「セッション」と呼ぶのを知った。
セッションと言えば、音楽、とりわけジャズが連想される。
たとえばジャム・セッションと呼ばれる演奏形態では、ゆるやかな方向性が設定されると、あとは演奏者の自由な判断によって音のやりとりがされるようになる。
考えてみれば、対談も、ひとつのテーマが提示されると、あとはその周辺を行きつ戻りつしながら自由に展開されていく。対談は、もとより心理療法の会話とは異なるが、その意味においてはまさにセッションそのものと言えなくもない。
ジャズが音によって会話するように、対談は言葉を用いて自由に話のやりとりをする。そのやりとりの中で、より多く「話し手」になるか「聴き手」になるかは、そのときの二人の状況や気分や流れによる。
私は、どちらかといえば、対談の場において「話し手」になるより「聴き手」になることを好んだ。
全4冊にはそれぞれ、テーマがあります。第1巻は「達人、かく語りき」、第2巻は「青春の言葉たち」、第3巻は旅、冒険、スポーツを描く「陶酔と覚醒」、第4巻は書くことをテーマにした「星をつなぐために」になります。
【各巻構成】
Ⅰ 達人、かく語りき(人物)
「肉体・異国・青春」吉本隆明/「逆襲ムカシばなし篇」吉行淳之介/「私の・愛した・映画」淀川長治/「時の廃墟へ」磯崎新/「旅が教えてくれたこと」高峰秀子/「一九六〇年を中心に」西部邁/「男から学んだこと、女から学んだこと」田辺聖子/「比叡山での日々」瀬戸内寂聴/「いつかの続き」井上陽水/「ジグソーパズルにピースをひとつ」羽生善治
Ⅱ 青春の言葉たち(青春)
「アクション・ターゲット」長谷川和彦/「貧しくても豊かな季節」武田鉄矢/「事実の力、言葉の力」立松和平/「いくつもの人生を生きて」吉永小百合/「見えない水路」尾崎豊/「みんなあとからついてくる」周防正行/「陶酔と憂鬱」先崎学/「ソウルで話そう」福本伸行/「あの旅の記憶」大沢たかお/「帰りなん、いざ」上村良介
Ⅲ 陶酔と覚醒(旅・冒険・スポーツ)
「スポーツ気分で旅に出ようか」山口瞳/「映画とオリンピック」市川崑/「スポーツを書くということ」後藤正治/「海があって、人がいて」白石康次郎/「すべてはつくることから」安藤忠雄/「最初の旅、最後の旅」森本哲郎/「サッカー日和」岡田武史/「垂直の情熱について」山野井泰史、山野井妙子/「記憶の濃度」山野井泰史/「拳をめぐって」角田光代
Ⅳ 星をつなぐために(フィクションとノンフィクション)
「ノンフィクションの可能性」柳田邦男/「事実と無名性」篠田一士/「アマチュア往来」猪瀬直樹/「書くことが生きることになるとき」柳田邦男/「フィクションとノンフィクションの分水嶺」辻井喬/「砂の声、水の音」村山由佳/「それを信じて」瀬戸内寂聴/「歩き、読み、書くノンフィクションの地平」角幡唯介/「鋭角と鈍角」後藤正治/「奪っても、なお」梯久美子
このように各巻にはテーマは、ありますが、同時に、各巻、沢木耕太郎さんによる書き下ろしのエッセイが入ります。
「あう」ということ
「きく」ということ
「みる」ということ
「かく」ということ
これらは、このシリーズの全巻を通じるもうひとつのテーマにもなります。