『破砕』あらすじ&登場人物
銃声とともに捩じれる生と死。
世界は砕け散り、もうどこにも戻れない。
師に見出され殺しの道を歩みはじめた彼女は、死と隣り合わせの最終訓練に臨む。人を破壊する術を身につけることは、人として、女としての「普通」の一生を粉々にすること──。
「この車に乗ったら最後、お前の身体は、一から十まで作り変えられる」。
あらすじ
師に見出され殺し屋への道を歩き出した「彼女」は、山に籠って最後の訓練に臨む。それは、ともすれば「彼」の手で命を奪われかねない、死と隣り合わせの厳しい訓練だった。ふと目が覚めると、両手を縛られ目隠しされた状態であることに気づく。朝露に濡れた草。少し動けば転がり落ちそうな斜面。ここはどこだ。敵は誰だ。手首をくくっている紐はなかなか断ち切れそうにない。彼女は頭の中で途切れ途切れの場面を繋げていく。昨夜、夕食の後、いったい何が起きたか。
『破砕』の爪角の若さも、成長前の未熟さも、この先大きくなっていくリュウへの思慕とその予感を匂わせる甘さも、すべて等身大で偏っているからこそ、『破果』と太い動脈で繫がっている証左だ。
深緑野分(本書解説より)
登場人物
- 彼女(=爪角(チョガク))
のちに殺し屋として名を馳せることになる少女。行き場を失い「彼」とその妻の家に転がり込むが、思わぬ事件をきっかけに殺しの素質を見出される。本作では「彼」に山中での最終訓練に連れ出され、容赦なく殺しの技術を叩き込まれる。 - 彼(=リュウ)
「彼女」の内に潜む殺人者の素質を見出した男。訓練中、「俺の背中を地面に押しつけることができたら下山する」と言い渡す。「彼女」にケガを負わせることも厭わず、女殺し屋としての将来のために持てる技術をすべて伝授しようとする。
破砕 2024年6月26日発売 |
『破果』の主人公、爪角(チョガク)がよみがえった。殺し屋になる前、まだ「普通」の生活を捨てきれていない、若き女性の姿で。師に見出され殺しの道を歩き出した爪角は、3週間、山に籠って最後の訓練に臨む。それは、ともすれば命を奪われかねない、死と隣り合わせの厳しい訓練だった。人を破壊する術を身につけることは、人として、女としての自分の一生も粉々にすること── 伝説の女殺し屋の誕生物語が、 ク・ビョンモ独特の濃厚な文体で生々しく描かれる。
<好評既刊>
韓国文学史上最高の「キラー小説」
破果 2022年12月16日発売 |
稼業ひとすじ45年。かつて名を馳せた腕利きの女殺し屋・爪角(チョガク) も老いからは逃れられず、ある日致命的なミスを犯してしまう。守るべきものはつくらない、を信条にハードな現場を生き抜いてきた彼女が心身の揺らぎを受け入れるとき、人生最後の死闘がはじまる。大反響を巻き起こした韓国文学史上最高の「キラー小説」!
<著訳者紹介>
ク・ビョンモ 구병모
作家。ソウル生まれ。2008年に『ウィザード・ベーカリー』でチャンビ青少年文学賞を受賞し、文壇デビュー。2015年には短編集『それが私だけではないことを』で今日の作家賞、ファン・スンウォン新進文学賞、2022年には短編「ニニコラチウプンタ」でキム・ユンジョン文学賞を受賞(以上、未邦訳)。邦訳作品に『四隣人の食卓』(書肆侃侃房)、『破果』(岩波書店)などがある。
小山内園子(おさない・そのこ)
韓日翻訳者。NHK 報道局ディレクターを経て、延世大学校などで韓国語を学ぶ。訳書に『四隣人の食卓』『破果』のほか、チョ・ナムジュ『耳をすませば』(筑摩書房)、カン・ファギル『大仏ホテルの幽霊』(白水社)、イ・ミンギョン『私たちにはことばが必要だ』『失われた賃金を求めて』(共訳、タバブックス)などがある。