作家インタビュー イザベル・シムレール「着想と創作のはじまり」2017年
── 「あお」という題材で絵本を描いたきっかけを教えてください。
1日の終わりにある、青の時間と呼ばれるひとときに興味がありました。それは、昼間の動物たちが眠りにつき、夜行性の動物たちがまだ目覚めない時間です。そこでふと思いついたのが、「生まれつき青い色をした動物たち」だけを描くことでした。絵本は、明るい青から濃い青までの「色見本」のようにまとめられています。
── いちばん好きな「あお」は何ですか?
カモの羽色かしら……。青すぎたり、鮮やかすぎたりしない……緑や、グレーの要素を含んだ青が好きなんです。
── 絵本にはめずらしい鳥や虫などの生きものが登場しますね。
猫を別にすれば、鳥と昆虫にすごく惹かれるんですよ。種類もかなり豊富です。絵本の中でいうなら、セイキチョウが好きですね。だって、すごくかわいいでしょう。かよわく見えるけれど、きっと強い鳥だと思う。
── 絵本をつくるために取材したこと、調べたことはありますか。
まず調べものをして、色鉛筆でスケッチをします。それから、ペンタブレットに描きはじめます。 本に取りかかる前は(『はくぶつかんのよる』の場合は特にそうでしたが)、後で必要になりそうなことや、描くためのインスピレーションを与えてくれそうな事柄については、細かいところまできっちりと調べておくようにしています。
── 日頃自然についてどのように感じていますか。
わたしはパリに住んでいて、自然から離れて暮らしていますが、とても大切なものですね。
── 自然でのお気に入りのすごし方は。
どこであれ、歩くのが好きです。町はもちろん、浜辺でも、山でも、田舎でも。
── 旅はしますか?
ええ。たいていは仕事で……。最近でいうと、先日出たばかりの"Ciels Rouges"(『シルクロードのあかい空』)を描く準備のため、中国へ行きましたね。
──『はくぶつかんのよる』の舞台となった、人がいなくなった博物館という着想はどこから来ましたか。
実は、わたしが初期につくった、鳥や昆虫や魚を描いた絵本を見て、コンフリュアンス博物館(人の起源から進化を紹介する「人間」の博物館)のほうから、収蔵品にまつわる作品を描いてほしいという依頼があったんです。そこで、博物館側にこちらの案を出し、そこからつくり上げていきました。
── シムレールさんが好きな博物館や美術館は?
子どものころで最も印象に残っているのは、ダリ劇場美術館です。ダリの故郷、スペインのフィゲラスにあります。ものすごく好き!!
大人になってからは、パリの自然史博物館ですごす時間がいちばん多いですね。どの生きものもきれいに展示されていて、いい刺激になります。自然史博物館以外では、パリ・マレ地区にある狩猟自然博物館が気に入っています。
── 博物館の魅力とは何でしょう。
残念ながら、人々は、そのときどきの大きな展覧会や、巨大な博物館に興味をかきたてられることが多いみたい……。でもわたしは、うんざりするような人混みが苦手なので、その空間にいてリラックスできるような、小さめの博物館が好きですね。
── 何か生きものを飼っていますか?
いつもそばに猫がいてくれたのですが、今はいません。
── シムレールさんの絵本には「幻想」と「リアリティ」が共存する美しさを感じます。
子どもの本の世界では、現実と幻想が、自然に共存していますよね。その 両方の要素があってこそ、本がより豊かで、味わい深いものになると思っています。
── 絵本を制作する上で大切にしていることは。
本を読んでくださる人たちの年齢や感受性に関わりなく、すんなりと受け入れてもらえるような、読みやすさでしょうか……? わたしが本をつくるときに、いつも心がけている点ですね。
── 趣味は何ですか?
顔を上げて、散歩をすること……不思議なくらい元気がわいてきます。
── 日本についてどんなイメージがありますか。
日本は大好きですね。日本文学、特に夏目漱石が……というか『我が輩は猫である』がほんとうに好きなんです! それからマンガも好きです。特に谷口ジローが好き。
幸いにも、10年ほど前、東京と京都を訪れる機会があったのですが、一瞬にして日本に惚れ込みました。
── 次作について教えてください。
動物たちが見る夢を、詩的でカラフルに描きました。どちらかというと幼い子ども向けの絵本です。(『ゆめみるどうぶつたち』)
◆イザベル・シムレールの絵本◆