『不便益のススメ』を読む 川上浩司さんトークイベント「世界を不便益で見る」
2019年9月24日
連続講座「ジュニア新書を読む」の第2回目は、『不便益のススメ―新しいデザインを求めて』の著者、川上浩司先生です。
「不便益」と聞いてあなたは何を想像しますか?
今の時代、「不便なことにそもそも益があるのか」と考える人が多いかもしれません。
そもそも「不便は困る」「便利がいちばん!」「効率重視」という考え方のもと、さまざまな発見や発明がなされ、科学・技術が進歩してきたのですから。
しかし今日は、そうした考えを横において、「不便益」の視点から世界を見ていきましょう。
会場は、岩波書店の本がそろっていて、お洒落なカフェを併設する神保町ブックセンター内のイベント会場です。写真は開始前のものです。パソコンの接続もおわり、お客様をおまちしているところです。
川上先生のご本も会場には並べられています。カバーイラストは、川上先生と同じ、京都在住のオオタガキフミさん。京都の雰囲気も上手に出してくださっています。
お客様も席に着かれ、いよいよお話が始まりました。
ふだんは京都大学で教鞭をとっておられる川上先生、講演もお手のものです。マイクなしでも、まったく気になりません。むしろ先生のお話しにより集中できる気がしました。これも不便の益?でしょうか。
パワーポイントを使い、食べ物や車など身近な例から「不便益」とは何かの説明を始めてくださいました。
なじみのあるモノやコトをあげながらの説明に、会場の人々も大きく頷いたり、いそがしくメモをとったりしています。
手間がかかったり、いつもより頭をつかったりしなければならない、でもそれだからこその益がユーザーにもたらされる、そのようなモノゴトを「不便益システム」と呼んでいるそうです。またそのシステムのデザインを「不便益デザイン」と呼び、先生自身もデザインし、かつ他の方の発明を認定しているとのこと。
そもそも先生自身、工学部出身の研究者として、「自動化・効率化・高機能化」を目指してきました。ところがある日、師匠の「これからは不便益やでぇ」の一言で、研究者人生の目的が大きく変わります。
そうした考えのもとデザインされた「素数ものさし」は、京都大学の生協でも大ヒット商品になりました。一時は、生産がおいつかないほどだったといいます。

会場でも、画面にうつった「素数ものさし」を使って、問題が出されます。目盛りは、すべて素数のため、目的の長さの線をひくのにも、頭を使います。「○○㎝をひくには、どうしたらいいでしょう?」、会場のかたがたへ、先生の質問が飛びます。
こうして、盛況のうちに終わりました。その後の質疑応答の時間も、「不便益」についての幅広い質問が飛びかい、相乗効果で便利追求が見逃してきた、けれど大事な価値や視点にきづかせてくれる時間となりました。
当日は、「不便益」に興味をもってお見えになったお客さんも多く、サイン会の折も、「不便益」について質問される方が多かったのが印象的でした。本を読んで参加された方も!
サイン会中ににこやかに質問に答える川上先生。
ようやくひと段落つきました。
岩波ジュニア新書創刊40年記念講座は、まだまだ続きます。
どうぞお楽しみに!!