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『図書』2023年11月号 目次

◇目次◇
《追悼 大江健三郎さん》
大江さんからの手紙……筒井康隆
光り輝く緑の大樹……山内久明
出会い……新川 明
水曜日のレッスン……田村久美子
ラスト・ピースまで……山登義明
大江さんの笑顔……カンタン・コリーヌ
大江健三郎 エッセイ・評論集 全四十二冊……尾崎真理子

田村義也さんの誤解……山田裕樹
書店と私③……近藤ようこ
揺れる写真……竹内万里子
分極化する政党システム……前田健太郎
図案科、西洋画科の開設と岡倉の失脚……新関公子
ステラーカイギュウは我らのカイギュウ……川端裕人
『モモ』との再会……田根 剛
花の種……柳 広司
こぼればなし
(表紙=杉本博司) 
 
 
◇こぼればなし◇

〇 本号では、今年三月に逝去された大江健三郎さんをめぐる特集を組みました。大江さんとの出会いや、仕事と人生が執筆者皆様の視点から綴られ、様々な発見があります。尾崎真理子さんの労作「大江健三郎 エッセイ・評論集 全四十二冊」は、今後の読書や研究、批評の参照軸となることでしょう。

〇 九月一日には、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部内に開設された「大江健三郎文庫」の発足式が行われ、同月一三日には、帝国ホテルに約三〇〇人が集い、お別れの会がもたれました。

〇 大江さんの巨大な仕事と発言の総体を、これからどう受け継ぎ、発展させていくか。両日とも、それが多くの人によって語られましたが、小社も、版元の一員として微力を尽くしていく所存です。

〇 「窮境を自分に乗り超えさせてくれる親密な手紙を、確かに書物にこそ見出して来たのだった」──一〇月には、大江さんの新刊となる岩波新書『親密な手紙』を刊行いたしました。小誌に二〇一〇年から一三年まで連載されたエッセイに、大江さんが大幅に加筆されたものです。

〇 大江健三郎という作家にとって、読むことが生きることであり、生きることが書くことであったのではないかと思わせる本書は、大江さんから、私たち読者に手渡された「手紙」そのものであると言えるのかもしれません。

〇 大江さんのお別れの会でなされた挨拶では、池澤夏樹さんをはじめ、大江さんの沖縄との関わりについてのお話も印象的でした。いま国が、沖縄の民意を無視し、姑息とも言える策を繰り出して、名護市辺野古沖への新基地建設を強行しようとし続けるなかで。

〇 そのようないま、八月から刊行してきました「新装版 大江健三郎同時代論集」(全一〇巻)の第四巻『沖縄経験』所収の「再び日本が沖縄に属する」を読み進めますと、そこに書かれている言葉が、古びて見えるどころか、逆に、これから先のことを考えていくための導きの燈火にも思えてきます。

〇 「僕がかつて、日本が沖縄に属すると書いた時、それはおおいに想像力の機能にかかわっていた。いま、そのたぐいの想像力をもたぬ者も、実際の現象として、日本が沖縄の、それもそこにある米軍基地プラス自衛隊基地こそを、自分の運命の核心をにぎる実体として担った事実を見ないわけにはゆかないだろう。しかもなおあえて眼をつぶる者も、かつてのようにひとつのクッションを介してでなく、いまや赤裸に、直接に、その運命を沖縄の基地にあずけている」(「再び日本が沖縄に属する」三一二頁。初出『世界』一九七二年一月号)

〇 七一年一一月一七日、「衆院沖縄返還協定特別委員会の〔中略〕抜打ち、強行採決を、ひとりの本土の日本人有権者として、傍聴席から見まもっていた」(同二九四頁)大江さんの論考です。

〇 鋭利かつユーモア漂う柳広司さん連載「うすねこやなぎいろ」は本号で最終回。ご愛読ありがとうございました。

 


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