『図書』2025年1月号 目次 【巻頭エッセイ】志村ふくみ「若き詩人へ」
【座談会】〈歴史の面白さ〉を伝える……吉村武彦・吉川真司・川尻秋生・澤田瞳子
もち食文化をどう守るのか……佐藤洋一郎
駆け足掛け算史……佐藤賢一
異才の衝突が生んだ音楽革命……サエキけんぞう
踊る、を書く……小沼純一
防災の倫理についての講義録……児玉聡
小裂への想い……志村昌司
お正月は寄席で初笑い……柳家三三
一月、おせちの海鮮に舌鼓……円満字二郎
富士山とアラビアンナイト……西尾哲夫
悲しみの星……中村佑子
「トムテ」の疑問……川端知嘉子
輸入学問としてのシェイクスピア……前沢浩子
こぼればなし
一月の新刊案内
[表紙に寄せて]our music/青野暦
裂(きれ)は私の心であり旅路である。
裂と常に一緒に今日まで生きてきた。
辛いときも寂しいときも、
裂をともにすることが、私には最大の慰めだった。
裂は友達であり、自分の魂でもある。
*
裂はどんなに小さくなっても、
語りかけてきます。
やさしく、愛らしく。
*
あまりに身近で気づかないかもしれないけれど、
裂はいつもいつもあなたたちの心を、
優しく包んで守ってくれる。
裂を大事にしてください。
(しむら ふくみ・染織家)
〇 明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
〇 昨年の元日、能登半島で最大震度7の巨大地震が発生。小欄執筆時点の一一月二六日現在、避難所数は二二に上り、避難されている方はまだ一〇一人いらっしゃるということです(内閣府「防災情報のページ」)。九月には、追い打ちをかけるように能登全域を豪雨災害が襲いました。小誌先号「能登・輪島を想う」で工芸店ようび主人の眞木啓子さんは書いておられました。「天災からの復興は、どう考えても、公の仕事です。この文化は、はっきりと、残すべきものと私は考えます」。被災された方々の暮らしと文化・産業の再建を切に願います。
〇 一二月に『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』の二冊同時刊行でスタートしました「宮﨑駿イメージボード全集」(スタジオジブリ責任編集)が、多くの読者に好評をもって迎えられています。宮﨑さん手描きの〈絵〉を、未発表作品も多数収録してお届けするシリーズです。原画の色彩やタッチ、風合いを高画質で再現し、大きさも原寸あるいは原寸に近いサイズで掲載。デジタルの時代にこそ、心ゆくまで味わいたい「紙の本」の真骨頂が、まさにここにあるといえるでしょう。
〇 各巻の巻末には、「宮さんのイメージボードには、映画を作る上での必要な情報が全部入っている」と語る、鈴木敏夫プロデューサーの新規インタビューを掲載。作品に即した逸話や〈絵〉の誕生経緯が明かされます。その鈴木さん自身が、「これまで宮さんの本格的なイメージボード集はなかった。今回の刊行をいちばん楽しみにしているのは僕かもしれない」とおっしゃるのです(引用はシリーズ内容案内より)。
〇 第二弾は三月刊行の『となりのトトロ』。いましばらくお待ちください。
〇 組版システムの移行に伴い、今号から誌面のレイアウトを変更いたしました。『図書』らしさとはなにかと自問しながら、山口デザイン事務所の山口信博さん、玉井一平さんのご協力のもと、美しく読みやすいデザインを追求しました。今後とも、ご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。
〇 今号の表紙から、志村ふくみさんの裂を季節ごとに毎月一点選んで掲載します。表紙の裏面の頁では、志村作品とのコラボレーションとして、一二人の詩人がその月の裂から自由に発想して作った詩のリレー連載を行ないます。あわせてお楽しみいただけますと幸いです。
〇 西尾哲夫さんの連載「〈『千一夜物語』の父〉ガランの謎」は最終回となります。新連載は、柳家三三さんの「落語家十二カ月」と、円満字二郎さんの「漢字の水族園in広辞苑」の二本です。どうぞご期待ください。