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『図書』2026年1月号 目次 【巻頭エッセイ】金承福「本が息をしはじめるとき」

◇目次◇
本が息をしはじめるとき……金承福
【座談会】〈翻案〉と文学……池澤夏樹・柴田元幸・澤西祐典
武蔵野は地人考のフィールドになる……赤坂憲雄
生物進化とヒトの善悪……辻和希
能はわかりにくいか……マイケル・エメリック
アナキスト(自由を愛する者)についての型破りな展覧会のこと……足立元
新出子規書簡「浮世絵書翰」……復本一郎
だめって言うちから……神野紗希
ホタルが照らす日本の文学……大場裕一
定年退職の蔵書整理……武田時昌
河野與一は何人いるのか特別版もいろいろ……山本貴光
本があるから心と向きあえる……大和田佳世
共同体家族の構造と父親殺し=神殺し……鹿島茂
うつは心の風邪?……中村佑子
こぼればなし

一月の新刊案内

(表紙=「風の谷」©Hayao Miyazaki『宮﨑駿イメージボード全集1 風の谷のナウシカ』より)
[表紙に寄せて]我流「風の谷」/養老孟司
 
 
◇読む人・書く人・作る人◇
本が息をしはじめるとき
金承福
 

 昨年、『本を作るのも楽しいですが、売るのはもっと楽しいです。』という本を上梓しました。一冊の本は、たくさんの人の手と想いが長い時間をかけて形になったものです。原稿を読んで言葉を整え、装丁が決まり、印刷の音を聞く。その一つひとつの過程には、静かな充実があります。

 けれども本当の意味で本が息をしはじめるのは、書店の棚から誰かの手に取られた瞬間ではないでしょうか。その一瞬を遠くから見守るとき、私はいつも背筋が少し伸びます。言葉が読者へ向かって歩き出す気配を感じるからです。

 装丁家の桂川潤さんが生前、神保町へいらっしゃるたびに私たちが運営する書店「チェッコリ」に立ち寄っては本を買ってくださいました。「本を作る仕事は、本屋で自分の作った本を買うまでが仕事です」と静かに語られたその言葉が、書店に立つたび心に浮かびます。制作の現場を知り尽くした一人の職人の言葉として、出版に関わる世界中の人へ伝えたいと思います。

 本は、作る人、売る人、読む人が揃って初めて完成します。その営みの循環の中に、私は希望を見ています。

(きむ すんぼく・クオン代表)

 
◇こぼればなし◇

〇 明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。年は改まりましたが、ウクライナ戦争はついに5年目に入り、ガザでの戦禍は停戦合意後も続く状況です。

〇 国際的に孤立してまで、イスラエルがパレスチナ人を徹底して攻撃するのはなぜか。11月に出た鶴見太郎さんの『シオニズム──イスラエルと現代世界』(岩波新書)は、「シオニズム」という思想・運動の起源と変遷を歴史的にたどり、読み解きます。「その過程に世界がどのように関わったのかを一つ一つ解きほぐしていくことで、現代世界が何に責任を持つべきかも明らかになるだろう」(同書「むすび」より)。鶴見さんのサントリー学芸賞受賞作『ユダヤ人の歴史』(中公新書)とあわせて読むことで認識が深まりそうです。

〇 11月刊の『新・解きたくなる数学』(佐藤雅彦・大島遼・廣瀬隼也)が大反響です。完全新作25問、ページをめくるたびに鮮やかな解説が登場。数学の本には見えない魅力的な写真とグラフィックで構成します。15万部のベストセラー、前作『解きたくなる数学』のコンセプト「ひと目で問題の意味がわかる、そして解きたくなる」はそのままに、新たな考え方をいくつも盛り込みました。

〇 ファミリー層向けの書店様からは、ぜひ児童書売り場でも売り伸ばしたいとの心強い声も。全世代におすすめできる本で、お子さんやお孫さんへの贈り物にも最適ですが、読者の感想に接しますと、親も子も楽しんで問題を解いていることがよくわかるのも、この本の特徴です。

〇 毎年11月23日の祝日、当方は「新村出賞」および「新村出研究奨励賞」の贈呈式に参加するため京都に赴きます。この2つの賞は、「言語学・日本語学、及びこれに関連する研究を奨励・促進するため」に贈られるものです(一般財団法人新村出記念財団ウェブサイトより)。古都の紅葉がひときわ色濃く鮮やかに感じられた昨秋の同日は、身の引き締まる特別な日となりました。昨年は新村出を編者に『広辞苑』が誕生して70年を迎える節目の年でもあり、昨年度から、2つの賞の運営を小社が「後援」としてお手伝いすることになったからです。

〇 令和7年度は、新村出賞が藤井俊博さん『和漢混淆文の生成と展開』(和泉書院)、新村出研究奨励賞が李乃琦さん『一切経音義古写本の研究』(汲古書院)でした。

〇 今号から表紙の絵は宮﨑駿さんのイメージボードより掲載、初回は「風の谷のナウシカ」から「風の谷」です。表紙裏では「表紙に寄せて」として関連エッセイをリレー形式でお届けいたします。

〇 新連載は神野紗希さん「抗うための17音」、大場裕一さん「光る生きもの夜話」、武田時昌さん「近代日本のなかの東洋人」です。どうぞご期待ください。


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