和菓子月ごよみ*霜月 遠紅葉
奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声きくときぞ 秋はかなしき
(よみびとしらず 『古今和歌集』巻第四・秋歌上)
「百人一首」では猿丸大夫作としておなじみ。
鹿はどんなふうに鳴くのだろう。聞いたことがなくても、なんだか切なくなる歌。
今年はお正月じたくに、かるたも準備してみましょうか。
生菓子「遠紅葉」(京都・鶴屋吉信)
干菓子の場合は、雲平細工(うんぺいざいく)で銀杏や楓を形作り、打物の銀杏の実や松笠などと合わせた吹き寄せがおすすめ。小さな箕(み)に盛れば秋の風情が漂うもので、野山に遊ぶような気分にひたれる。紅葉をイメージした菓子に、全国各地の名所を思ったり、秋の移ろいを読み取ったりしてはいかがだろうか。
(中山圭子『事典 和菓子の世界 増補改訂版』より)