和菓子月ごよみ*師走 君の名は
なま-がし【生菓子】①水分の多い、主として餡(あん)類を用いた菓子。餅菓子・饅頭・羊羹など。和生菓子。↔干菓子
(広辞苑第七版)
きんとんと聞けば、正月のお節料理に食べる栗きんとん、豆きんとんがまず思い出されることだろう。しかし茶席の菓子のきんとんとなると、餡玉の周りに箸でそぼろ状の餡をつけて毛糸玉のようにしたものが知られる。(…)色合いによって様々な風物が見立てられ、年間を通して作られている。
(中山圭子『事典 和菓子の世界 増補改訂版』より)
12/15 に開催された、広辞苑大学×神保町ブックセンター「和菓子のことば」では、中山圭子さんによる和菓子の歴史の解説のあと、参加者のみなさんは、写真のきんとん(とらや)をいただきながら、それぞれ思い思いの「名前」を付けました。
さて、どんな名前をつけましょうか。
さて、どんな名前をつけましょうか。
そしてとらやのお店でつけられている名前は?
〇当日参加された方々から出された名前と解説です。どれも魅力的!(50音順)
・秋時雨(あきしぐれ。晩秋の雨のさびしい雰囲気と、茶系の秋の木々)
・袷手毬(あわせてまり。着物の表と裏地に、手毬のかたち)
・一陽来復(いちようらいふく。冬至が近いので)
・雲泥(うんでい。空にたなびく雲と、この地にある泥。届かない恋)
・朧月夜(おぼろつきよ。乳白色の穏やかな月と夜と)
・かこみらい(深い思い出の色と希望の明るさ)
・風子(かぜのこ。子どもたちが公園で雪玉を握っている)
・仮面(黒かと思ったら中が白いところもあり。ふんわりとした外面に隠された中身はわからない)
・枯木立(かれこだち。秋の枯れた山)
・小春衣(こはるごろも。厳しい寒さの中ほっとする穏やかな日ざし)
・霜どけ(霜がすこしずつ溶けていく、寒い中のぬくもり)
・月散歩(つきさんぽ。闇夜でかつ月のぼんやりした光の中の散歩)
・つぐみ(ぴょこぴょこ歩くつぐみの様子)
・猫ちぐら
・百代(はくたい。時間を問わず歩き続ける旅人)
・初時雨(はつしぐれ。雨から雪になり大地につもりはじめて)
・温調(はるのしらべ。2018年の印象的なニュースは安室奈美恵さんの引退。息子さんの名前のよみを使って)
・春待つ日(土の上に厚く積もった雪、それが溶ける日を地面は静かに待っている)
・冬木立(雪原に立つ葉を落とした林)
・ほっ栗(ほっくり。茶色いココアを飲んでほっとする。かたちから栗を連想して)
・雪岨道(ゆきのそわみち。けわしい山道に雪も少し吹き飛んでいる)
・雪初め(ゆきはじめ。地面に落ちたまだひとひらの雪)
・雪晴(ゆきばれ。雪が降った翌日、溶けて道が見えてくる)
・夜半の舟(よわのふね。夜と朝の間の“こちら”と“あちら”をつなぐ心の舟)
・綿雪(わたゆき。土の上にふんわりと雪がのっている)
*当日の様子の記事が 朝日新聞社「好書好日」 に掲載されました。
(とらやでの名前もこの記事の中に出てきます)