岡田晴恵 次なる対策を
新顔のウイルスは、環境破壊の進んだ地域から浮上している。
(リチャード・プレストン『ホット・ゾーン──「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々』高見浩訳、飛鳥新社)
2011年3月11日、私は経団連の「新型インフルエンザ・パンデミック対策」の講演会に参加していた。あれから11年になろうという2022年2月現在、新型コロナウイルス・オミクロン株がパンデミック(世界同時流行)を起こしている。ちょうど2年前の2月、日本はダイヤモンド・プリンセス号問題で揺れていた。3713人の乗客乗務員の全員をPCR検査して下船させるのに紆余曲折し、時間を浪費して多くの感染者と死者(致死率2%)を出し、豪華客船は海外では「海に浮かぶ監獄」と評された。
そして、今、第6波の新型コロナの流行下、日本でも1日当たりの新規陽性者数が10万人を超え、検査不足のため「見なし診断」や、医療逼迫から若く健康な人は医療機関を受診せずに「自宅療養」を求められている。それどころか、高齢者施設では感染した患者が医療機関に受け入れられず、施設内での療養となり、救急救命の逼迫のため患者の病状が悪化しても「高齢者施設では119番通報は控えてほしい」との通達までもが出されている。これは最早、医療崩壊。「災害医療」の対応が必要と言える事態ではないのか。
このような状況を教訓とし、次の波に備えるためにも最悪の事態を想定して、PCR検査100万件/日という欧米並みの拡充、検査キットの国家備蓄、保健所の逼迫には官民一体であたっての体制強化、さらに一般医療に影響を及ぼさないためにも、感染者が増加した場合に受け入れる大規模集約医療施設を酸素配管の整備をして設置することが急務である。また、長期的視野で医療従事者の育成にも、教育機関の新規設置、定員増加などを含めて対応すべきであろう。ただ、これらのことは2009年の新型インフルエンザの報告書でも、新型インフルエンザ等対策特別措置法などでもすでに指摘、明記されていたことなのだが……。
オミクロンが最後のコロナの変異株かどうかが不明なだけでなく(たぶん最後ではないだろう)、今後、新たなウイルスによるパンデミックも想定しなければならない。この1世紀、世界人口は飛躍的に増加し、熱帯雨林などの野生動物の生息地域の開発も急速に進んでいる。野生動物と人の接触から、未知のウイルスが人社会に出現し、グローバル化した高速大量輸送時代を背景に瞬く間にパンデミックを起こすことも想定される。このような新興感染症の大流行もまた「災害」である。
いかに「減災」していくのか。コロナ対策を検証して、次なる対策に踏み出さねばならない時に来ている。11年前の震災の被災者に思いを寄せながら考える。
(現在は隔月で「web岩波 たねをまく」で連載継続中)