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行司千絵『服のはなし』〈著者からのメッセージ〉

 

 

装いの向こうにあるもの

 二〇年ほど前、思うところがあって自分のふだん着を縫いはじめました。見よう見まねの独学ですが、いつしか同居している八〇代の母、知人、友人の服も手がけるようになり、新聞記者をしながら、服づくりを続けています。

 ひとりひとりに似合う一着をイメージして、ワンピースの襟元に刺繍をしたり、ダッフルコートに革のポケットをつけたりするうちに、疑問が湧いてきました。手縫いが珍しがられるのは不思議だな。そういえば、布やボタンはどうやってつくられているのかな。たくさんの服が売られているのに、知人や友人が「ほしいものがない」と言うのはなぜだろう。そもそも、人がおしゃれをするのは何のため?

 着ること、つくることの意味が知りたくて、昭和から現在までの服装や手芸の歩みをたどりながら、さまざまな人にはなしを聞きました。服は、体を守るだけでなく心と響き合っていて、想像していなかった世界と深く結びついてもいる。毎朝、身支度するたびに、そんな思いがよぎります。
(ぎょうじ ちえ/新聞記者、ときどき服をつくる人)

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著者略歴

  1. 行司 千絵

    1970年生まれ。同志社女子大学芸学部英文学科卒。京都新聞に勤めながら独学で洋裁を習得し、自身の普段着や母、友人・知人の服を縫っている。瀬戸内寂聴さんや志村ふくみさんなど、3〜91歳の80人に服を作った。個展に「母と私の服」(西宮阪急)「おうちのふく」(フォイルギャラリー)「まだ見ぬあなたに作った服」(誠光社)など、著書に『おうちのふく』(FOIL)など。『図書』2018年11月号・12月号に「精文館と児童誌『カシコイ』を探して」を寄稿。

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