宮城 修『ドキュメント 〈アメリカ世〉の沖縄』<著者からのメッセージ>
分厚く巨大な壁に立ち向かった“もう一つの現代史”
沖縄は戦後、アメリカ統治(沖縄では〈アメリカ世〉とも言います)を経て1972年5月15日、日本に「復帰」(施政権返還)しました。本書は27年に及んだ〈アメリカ世〉の記録です。
日米の激烈な戦闘に住民が巻き込まれ「ありったけの地獄を一つにまとめた」沖縄戦が終わった後、米軍占領という「地獄は続いていた」のでした。やがてサンフランシスコ講和条約が発効し日本は独立しますが、沖縄は奄美、小笠原と共に日本から切り離されアメリカが統治します。
軍事最優先のこの時期を「軍事植民地」と表現する識者もいます。基本的人権や自治が侵害され、命が脅かされる中で、人々は平和主義を明文化した日本国憲法にあこがれたのです。日本国憲法の下に帰りたい──。この切実な願いを実現するために、人々はアメリカという分厚く巨大な壁に立ち向かいました。
日本の戦後史を複眼的に捉えるために、沖縄の戦後史は欠かせない要素です。本書を通じて“もう一つの現代史”に触れてもらえれば幸いです。
(みやぎ おさむ/琉球新報論説委員長)