上野千鶴子『女の子はどう生きるか』〈著者からのメッセージ〉
十代の「ワタシ」のための女性学
岩波書店から吉野源三郎の名著、『君たちはどう生きるか』が出ている。しかも時代を超えてマンガ化され、原著も含めてベストセラーになった。
だが。「キミたち」と呼びかけられるたびに、ざらっとする。「キミたち」のなかにワタシはいないのか、と。
2019年春の東京大学入学式の来賓祝辞に招かれてから、急に若いひとたちのあいだで、知名度があがった。それから高校の生徒さんを対象にする講演会、とりわけ進学女子校からの講演依頼が増えた。北関東の公立進学女子校での、わたしの講演に岩波書店の編集者が参加して、現場での高校生とのナマのやりとりをおもしろがってくれた。実際の取材にもとづいてQ&Aを構成したのがこの編集者、山下真智子さんである。彼女は十代の娘を育てる母親でもある。
実はジュニア新書で十代の女の子向けの本を書いてほしい、と10年前から頼まれていた。類書の企画を各社から持ち込まれたが、すべて「先約がありますから」とお断りしてきた。本書は山下さんの執念の産物と言ってよい。長いあいだの負債を支払った気分である。
うえの ちづこ/ウィメンズアクションネットワーク理事長・東京大学名誉教授