小川幸司『シリーズ歴史総合を学ぶ③ 世界史とは何か──「歴史実践」のために』<著者からのメッセージ>
ノートを捨てよ、世界へ出よう
今日の世界史の授業が終わったとき、目の前の世界の見え方が、なんだか授業の前とは違っている…高校生がそんな驚きを重ねられるような歴史学習が、私の目標です。
世界に歴史認識対立やポスト真実の風潮が満ちあふれる今だからこそ、ファクトを丁寧に読み解き、その解釈を他者と対話して吟味していく学びが必要なのだと思います。そして一人一人の実存に、世界史がいかに深く繫がっているかを見つめていきたい。
そこで私は、授業からノートや穴埋めプリントをひとまず捨ててみることにしました。机の上には、教科書とiPadに配信した史料があればいい。教科書を読み込み、テキスト批判をしながら、そこから浮かび上がってきた歴史上の課題を考察し、対話するのです。そして歴史を考えるときの方法に自覚的になって、歴史を「問う私」のあり方自体を問い直していきます。
私たち一人一人にとって世界史がリアリティのある生き生きとしたものであることが今の時代こそ、求められています。本書は、私のこれまでの歴史実践の模索から生まれた方法序説です。
(おがわ こうじ/長野県伊那弥生ヶ丘高等学校教員)