井波律子(著),井波陵一(編)『ラスト・ワルツ 胸躍る中国文学とともに』<編者からのメッセージ>
「ラスト・ワルツ」の意味
井波律子の本棚には、寄稿した雑誌の現物やコピーを収めたファイルが今もずらりと並んでいます。その中から、『水滸伝』や『世説新語』を語った小文、絶筆となった「わたしの水滸伝(第一部)」、そして書評や日常に関する随筆など、様々な単行本未収録の文章を選びました。
書名を『ラスト・ワルツ』としたのは、アメリカのロックグループを代表するザ・バンドの、解散コンサートを記録した映画のタイトルから来ています。長年、井波律子に執筆の元気を与え続けたのが、彼らの音楽であり、この映画でした。
「腕のいいライター」を目指した井波律子は、ともすれば敬遠されがちな漢詩文に秘められた、繊細で鋭敏な感性を自在に解き放ち、読む人の心に沁み入るような分かりやすい解釈や翻訳を常に心がけていました。初めての方にも今まで読んできて下さった方にも、改めて井波律子と出会っていただけることを、また本書が井波律子の数々の著作への導きの糸となることを願ってやみません。
(いなみ りょういち/中国文学者)