八木健治『羊皮紙の世界 薄皮が秘める分厚い歴史と物語』<著者からのメッセージ>
風呂場から開いた羊皮紙の世界
動物の皮からできる不思議な紙、羊皮紙。2006年、オランダのとあるウェブサイトで羊皮紙の作り方が紹介されているのを発見。「これは是非とも作りたい!」と生皮の入手先をネットで検索。ヒットしたのはキプロス島からのひつじ皮。ただし最低ロットはコンテナ単位……。結局北海道のひつじ牧場から一枚送ってもらい、羊皮紙作りをはじめました。
家で水を使った作業ができる唯一の場所、自宅の風呂場が「羊皮紙工房」となったのです。夜な夜な風呂場で毛を剝いで、脂にまみれて「Made in 風呂場」の羊皮紙が完成。実際に作るとたくさんの疑問が湧いてきます。世界中から羊皮紙写本を集めて観察し、海外の職人やアーティストを訪れて多くを学びました。
その過程での発見や羊皮紙の基本知識を、多数の図版を通して「見て愉しめる」ようにまとめたのが本書です。紀元前から存在しつつも日本ではなじみの薄い、いわば古くて新鮮な羊皮紙の世界に、オマケで付けた小さな羊皮紙を撫でながら浸ってみてください。「これは是非とも作りたい!」と思う方が現れることを楽しみに。
(やぎ けんじ/羊皮紙研究家)